第39回俳人協会賞本賞受賞!
[立ち読みする]
”芸”の冴え
重厚にして平明、そして清雅なリリシズム
◆自選十三句より
うとうととしてかたくりの花ふえて
雛飾る誰のものともあらぬ雛
瑞牆山を空に置きたる菫かな
一瓣にして酒中花のまぎれなし
霞むならこの山のこの木の下で
枝あげてあげて白桃咲きにけり
向うにも老人のゐる春の暮
春眠に屈し春愁にも屈し
烈風の枝ことごとく桐の花
走り茶の針のこぼれの二三本
その薔薇の名も古りにけり吾も古り
遅れたる足を引き寄せ蟇
寒風や砂を流るる砂の粒
*
[いしだかつひこ(1920〜)「泉」同人 俳人協会評議員 日本文芸家協会会員]
四六判並製
164頁
2000.04.01刊行