◆現代俳句女流シリーズ燦
空蝉や背にほつれ糸のこしをり
照代さんの写生力がもっとも生きていて、しかもペーソスがある。
すてられぬ母の紅筆一葉忌
この紅筆は病いのため紅をつけられなかったが、母堂が大切にしていた紅筆である。このことを知ればますます深みの増す句である。
韋駄天の後ろに去年の闇があり
雪女郎帰りしあとの心張棒
このように『紅筆』は多くの佳句を収めている。
(帯より)
青邨先生の「先ず俳句は詩であることを忘れずに」のおことばに沿い心の、物の、自然の中にあるゆらぎを確り見詰めようと歩き始めました。
(あとがきより)
◆収録作品より
正月の雨松に降り地に降りぬ
七草や津軽塗箸つややかに
人日や戯画の蛙が立ち歩く
男坂より雪解けやすし女坂
助六の空に見得切る錦凧
九八屋の庭満開のしだれ梅
あざやかに官女の中の立雛
膝も癒え磴のぼりきる初桜
ひとすぢの川の流るる花吹雪
花衣そのひといろの真紅
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[くればやしてるよ(1933〜)「天為」同人 俳人協会会員]
栞:大屋達治
帯・序:有馬朗人
装丁:スタジオ・ギブ 川島進
A5判上製カバー装
112頁
1997.09.20刊行