◆現代俳句女流シリーズ燦
「残る虫命たしかめあふばかり」
かなり主観的色彩が濃いのだが、読み返しているうちに、実感の裏打があることがわかってくる。
「あはあはとさすがに頃の萩咲いて」
淡々と詠い流しているのがいい。こうした詠み口は、刺戟が足りないために、見逃されやすいのだが、これが、花鳥諷詠本来の行き方だと言ってよい。
(帯より)
平凡なくらしの哀歓を、先生に的確に汲み取って頂くと、大袈裟ではなく、明日への勇気が生れたように思う。現代に生きるものとして様々な季題に挑戦して行きたい。
(あとがきより)
◆収録作品より
山毛欅若葉一気に山を埋めんとす
雪解川夜はしろがねにたかぶれる
雪解川行きたき方へ行きにけり
美しき耳そばだてて海芋咲き
緑蔭の奥へと蝶は身をかがめ
瀧冷えの芯まで黒き揚羽かな
流灯のひとたびは振り返りたる
灯籠のくづほれつつも流れけり
丈揃ふなく女郎花一面に
時雨るると調度の漆匂ひけり
*
[すだふみこ(1937〜)「若葉」同人 俳人協会会員]
栞:鈴木貞雄
帯:清崎敏郎
序:西村和子
装丁:スタジオ・ギブ 川島進
A5判上製カバー装
112頁
1996.07.06刊行