◆現代俳句女流シリーズ燦
「上り詰め月影固く締りたる」
対象への着眼は勿論、その切り取り方、とりわけ表現に於ての言葉の斡旋に、私は男性に負けない剛直さを感じる。にも拘らず、
「女滝とは木の間隠れに見て美し」
などのしなやかな叙情。
「花楝やがて紫雲になるつもり」
などに見る確かな知性。それはしっかりと女性の目で見た男性の知性とも私には見えて、まことに頼しい漢字がする。
(帯より)
俳句に関心を抱いたのは、学生時代から諷詠同人であった江川虹村との結婚からであった。山野歩きの好きだった義母に蹤いて、古都の風物にも触れ、新しく俳句の季題が増えて行くことが嬉しかった。
(あとがきより)
◆収録作品より
御朱印の帆上げて宝舟となす
双六の五十三次とは遠し
須磨琴の高鳴り落花しきりなり
竹の性使ひこなして?を挿す
卒業歌顔いつぱいに歌ひけり
年頃の売り娘もバレンタインの日
括られて目刺大小失くしたる
春泥も維新の道と思ひけり
観潮といひて表面だけを見る
踏出しの一歩が大事麦を踏む
*
[えがわゆきこ(1934〜)「諷詠」同人 俳人協会会員 大阪俳人クラブ会員]
栞:岩城久治
帯・序:後藤比奈夫
装丁:スタジオ・ギブ 川島進
A5判上製カバー装
112頁
1996.02.20刊行