◆現代俳句女流シリーズ燦
奈良の窓の柿若葉越しに塔を眺めたり、川面に足を垂らしたりする、そんなしぐさが私の日々の姿勢に近いのだ。中年の豊かさがほどよく出ているではないか。ゆとりと言ってもよいし、遊び心と呼んでもいいが、無理のない心の弾みが明るい色調の風景を作りだしているのだ。
草萌の堤渡れば会へさうな
この句集の読者がみんなこの句の気分になってくれたらどんなにいいだろう。
(帯より)
句集名「花衣桁」は、誕生日にいただいた手作りの朱塗りの「花衣桁」から名付けたものです。これに四季折々の花を挿し鑑賞するように、鑑賞に堪える作句が出来ればと思っています。
(あとがきより)
◆収録作品より
餅花に背を跼みて通りけり
朽ちかけし橋を渡れば蕗の薹
犬ふぐり去来草庵垣低く
落柿舎へ道の賑はふ犬ふぐり
黒鳥居くぐり野々宮百千鳥
春陰や鈍き光の観世音
楓の芽祗王祗女の像おはす
春の古都旅の終りの千仏
桜吹雪高座石まで及びけり
青梅雨や少し濃いめに紅をひく
*
[かねこさとみ(1943〜)「船団の会」会員]
栞:復本一郎
帯・序:坪内稔典
装丁:スタジオ・ギブ 川島進
A5判上製カバー装
112頁
1995.10.14刊行