◆現代俳句女流シリーズ燦
僧兵の跫音きこゆ初比叡
大津絵の猫とねずみや颱風来
過去のものを今日のものに、生活的視点を変更する意志とロマンがあり、俳句の感性に連らなる無意識のはからい(創作意志)がうかがえるのである。
時と所を得て比叡平に住居をもつ、という望むべくして手に入るものでない、この人の人生のの招きが、この幸運をもたらしたのである。この与えられた環境と人生を尊まねばならないだろう。
(帯より)
季題への心を深くして、てくてく歩き続ければ、きっと「天からの授かりもの」と思われるような句ができるかもしれない。俳句にはそうした決して尽きることのない楽しみがあると信じて。
(あとがきより)
◆収録作品より
山の石一夜に運ぶ大雷雨
蜘蛛の囲をくぐりて朝の縦走路
フラメンコ聞こえて来さう鶏頭花
初雪や獣のごとき山の夜
ルノアールの裸婦みづみづし朝桜
緑蔭やドボルザークを聞きゐたり
一筆の醸す濃淡石鼎忌
霧ひかる分水嶺に人と会ふ
水引草束ねてありぬ躙口
ムンク展出て木枯に襲はるる
*
[やまおいくよ(1948〜)「鹿火屋」同人 俳人協会会員]
栞:関戸靖子
帯・序:原裕
装丁:スタジオ・ギブ 川島進
A5判上製カバー装
112頁
1996.02.06刊行