◆処女句集
加藤楸邨という偉大な先覚者に推された最後の同人であったという不思議な運命がどんな展開を見せてゆくか、これからを楽しみに待とう。
(序より)
◆収録作品より
一人来て涅槃図の前横切りぬ
終戦の日の一日や文字の中
柔道着の子ら走り抜け曼珠沙華
京暮れてまつしろな足袋干してあり
産院の門の中まで桃の花
引き込み線真っ赤に錆びて啄木忌
煎胡麻を奥歯で噛みて冬野かな
紅鮭の切られ再び輝けり
顔も名も忘れてしまひ菜飯食ふ
頬骨を春田に晒し戻りけり
*
[ひらたあけみ(1952〜)「椎」「寒雷」同人]
序:原田喬
装丁:スタジオ・ギブ 川島進
四六判上製カバー装
208頁
1994.08.01刊行