◆ 第一句集
「白い灰黒い灰ある野焼あと」野焼のあとに、燃えて黒い灰になるものと白い灰になるものがあるのは、誰にでも見えそうな感じがするが、毎年自分で野焼に参加される著者であってみれば、そうなる植物にまで覚えがあるのかもしれぬ。
(序より・後藤比奈夫)
去年までは夫と摘みゐし花山椒
遠雷を聞きて水やり余念なし
小夜の雨受けて花菜の丈となる
手垢とも祖父の形見の藁砧
有田川みかんの中を流れけり
夏花摘近所誘つて奥山へ
真夜にふと凩の音の吾子かとも
畑打てば亡き子の声の「えらからう」
注ぐ度に一振りしてはにごり酒
重さうに何か載せをる冬の雲
序・題簽・後藤比奈夫
装丁・君嶋真理子 四六判上製函入り総クロス装背継ぎ 188頁