昂ぶるところのない、何かを言わんとしつつ訴えかける、気品のある作品が並ぶ。昭和55年から平成16年までの句を収録。
神宮を外宮さん・内宮さんと口にして親しみ崇敬した日々を青春に持つ私共には、まことに心寧まる一書となるに相違ない。よろこんで、この筆をすすめている私は、無理をせずに、ひろやかな心で『伊勢は秋』の誕生を祝いたい。そうしてこれから以後もずっと伊勢の森や町の佇まいと共に、湊さんの俳句もより一層のひろらかさを展開してゆくことと思われる。(序・山田みづえ)
●収録作品より
誰よりもわが来し方を知る雛よ
苗植うは明日にせむ風強ければ
実ざくろの色失ひて母逝きし
戦争を知る樹も芽吹き初めにけり
神楽殿雪解雫のあたたかし
序文・山田みづゑ
装丁・君嶋真理子 四六判上製カバー装 172頁
●著者略歴
昭和2年1月三重県生。昭和55年10月「木語」入会。山田みづえ先生に師事。「木語」同人。