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◆ 第1句集
「はなびらの紙の冷たさ放哉忌」「三鬼忌の鳩の飛び出す鳩時計」「地ビールとオニオンスープ冬に入る」これらの一句一句にも暮らしを通した軽やかな折々の礼賛がある。大方を吟行詠に徹している著者だけに、こうした軽やかな暮らしの機微の呟きがむしろ一服の涼感のように届いてくる。そしてここに著者・伊東美鈴の本音の光芒を見続けている。(増成栗人)
千枚田打ちて平郡の霞みけり
青柿の落ちる音して根来寺
熊野古道かんかん照りの祭かな
雪雫ふいに近くの音となる
春耕の夫婦の離ればなれかな
南京ごろごろ大宇陀のよく晴れて
利休寺の雪の浄土となりにけり
座禅草見続けをれば雪となる
囮鮎だんだん山の濃くなりぬ
曼珠沙華のなか湯中りのやうにゐる
(収録作品より)
「鴻」同人(1939〜)
定価 本体2476円+税=2600円
序・増成栗人
装丁・後藤兼志
四六判上製カバー装
212頁
2007.02.11刊行