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◆ 第二句集
「笹鳴やふつくら嬰のもの乾き」
「先頭の顔尖らせて寒念仏」
同じ季節でも、日々に表情を変えるが、その微妙な違いを捉えるのが、すぐれた俳人である。ともに冬の句でありながら、前句は「冬日和」、後句は「極寒」の趣を見事に表現している。「この店の頑固が好きで柏餅」人情の機微に触れるような生活実感から生まれた作品も多く、『一笛』は、いかにもベテランらしい一巻。(帯・鷹羽狩行)
まろび寝をまことしやかに壬生狂言
縁談にしらじら扇使ひけり
ふるさとやほとけの前に昼寝覚
秋蝶と思へぬ高さ北信濃
万葉の世もかくあらむ薺摘み
背の子の足でよろこぶ祭山車
十六夜や消されてにほふ燭の芯
夕暮のいろ綿虫に及びけり
向日葵の立ちはだかるといふ高さ
ぬかるみを大跨ぎして苗木市
[わたなべしかじょ (1931〜)「狩」同人]
帯・鷹羽狩行
装丁・君嶋真理子
四六判上製カバー装
172頁 2007.02.22刊行