◆第四句集
日々の暮らしに浮沈するちょっとした出来事や心からなる深い思いを強い骨格と柔軟な言葉で成句した一句一句。
この作者ならではの確かな俳句。
帯・宇多喜代子
◆宇多喜代子抄出十五句
炎昼を病む静けさに水の音
背後からのぞく人影鰻桶
春暁の眠るでもなき刻しばし
まづ赤きものに手をつけ節料理
孕鹿何見るとなき眼を向けて
うしろから来るもの冬も足音も
夕風に土の匂ひや夏来る
火と水をほそぼそ使ひ冬ごもり
父の日のあの戦争を知る眼鏡
もうひとり来て掃き始む寺落葉
名園のどの木ともなく薄紅葉
秋涼し神に仏に朝の水
母もその母も長生き初山河
しばし人遠ざけて秋深みゆく
寒卵不揃ひ十個光り合ふ
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[よしだしげこ(1936〜)「草樹」会員]
帯:宇多喜代子
装丁:上製カバー装
186頁
2025/11/16刊行