◆第一句集
遠き山は心のかたちそぞろ寒
木津さんは、脇道に逸れ、遠回りを厭わず、存外に寄道を楽しんでしまうのではなかろうか。風が吹くまま、雲が浮くまま、時の流れに身を任せて寄道をつづけていらっしゃる、そんな印象を与えるお方なのだ。
(栞より・新井大介)
◆自選十五句
雪崩から立ち匂ひたる大昔
尾のやうに水菜をつかみ夕暮るる
百枚の名刺が揃ふ穀雨かな
海の底みえて仔馬の顎うごく
桑の実や両肩がまだ日の中に
夕凪や遺言もまた歌のやう
能面に遅れて顔が夏野へと
虫すだく世のかたすみに薬箱
水の膜やぶれて秋の滝となる
虫売のその後は夢の虫籠へ
かなかなや積木を箱にしまふ時
うつくしい火の山へ行く雪の道
源流に嬉しさはあり鷹一羽
室の花買はるるまでは日に震へ
本棚の向ふは枯野眠りたし
Amazonでの本の購入はこちらより→ Amazon
ご本の紹介→ (ふらんす堂「編集日記」)
[きづなおひと(1956〜)「ににん」所属]
栞:新井大介
装丁:山根佐保(ream)
四六判変形並製カバー装
170頁
2025/09/25刊行