◆第二句集
折り鶴を開けば四角ひろしま忌
第一句集『銀の笛』は、俳壇からも多くの評価を受け、千葉県俳句大賞の奨励賞、「沖」の珊瑚賞を受賞している。
第二句集名『折り鶴』となった句は、広島、長崎に原爆が投下され八十年になる今も、何万もの折り鶴を御霊に捧げることで平和を祈り続けている。心を込めて折った鶴も開けばただの折り紙に戻ってしまうように、中々平和の実現に至らないもどかしさを詠んだものであり、真の平和を願う作者の強いメッセージのある句である。
帯・沖主宰 能村 研三
◆自選十五句
春光や縒りて艶ます刺繍糸
桜咲き満つ寂しさの倍になる
繰る辞書の紙の薄さよ新樹の夜
ドロップのごと子ら駆ける五月の野
風に髪あづけ少女は五月の木
山滴る人に会はねば言葉痩せ
万緑や戻れぬ道は振り向かず
折り鶴を開けば四角ひろしま忌
香水一滴あともどりもうできず
指栞して初秋の風を聴く
桃は種人は命を深く抱き
青蜜柑言つておかねばならぬこと
秋惜しむページの角を小さく折り
瓢の笛諦めてより鳴り始む
風爽かまだ濡れてゐる草木染
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[くりはらきみこ(1943〜)「沖」同人会副会長]
序:能村研三
装丁:和兔
四六判上製カバー装
208頁
2025/09/10刊行