◆第二句集
行きずりの焚火にあれど長居せし
大槻さんの句は〈花鳥風詠〉というより人事の中に入り込んで来る自然、森羅万象の中に身を置いた生活詠が多い。
人間関係のそれもちょっとした思惑、遣り取りの齟齬などに触れ敏感に反応する。言葉の〈綾〉を上手く掬い取る名手である。
◆中原道夫抄出
春泥の足跡われを尾行する
我が不覚もみ消すやうに陽炎へる
夏萩やすずしき貌で嘘をつく
歪みこそ普遍の世界くわりんの実
夜景みな箱庭と化す稲光
毛糸編む縒の戻らぬこと承知
言ひ訳のやうに出てきし余蘖かな
紙風船つけば親子でちがふ音
身中の虫目覚めさす夜長かな
人なべて不開の扉もち端居
舌を出す蛤のオオミステーク
唐黍は若さで齧るものらしく
[おおつきかずき(1929〜)「銀化」同人]
帯・装丁:中原道夫
A5判変形上製カバー装
222頁
2025/05/05刊行