◆第一句集
オルゴール鳴らして買はず霧の街
登さんの俳句は「蘭」の抒情性を汲みつつ、幅広い経験、知見が盛り込まれた作風。
一方で、いわば庶民的な視線で、身辺の機微を掬い、人間の細かな仕草や場面を切取る巧みさも併せ持つ。
跋より・しなだしん
◆自選十五句
珈琲の花は真つ白夏来る
弔問の子らの整列梅真白
鳥を観る窓に顔ある雨水かな
一本の桜の下に全社員
深々と掛けて暮春のジャズ喫茶
打水やみんな忘れてなつかしき
空つ風母の名前のスナックに
公魚を中村伸郎のやうに喰ふ
列車発つ遠郭公の遠きまま
毒茸のしづかに虫に食はれをり
冬の灯やモデルルームに一家族
松の位置気になつてきし雪見酒
朝寝して隣のショパン聴かさるる
豆飯をよろこび祖母をよろこばす
木の扉あけて聖夜のジャズ放つ
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[さかもとのぼる(1951〜)「OPUS」同人、編集人、「青山」同人]
跋:しなだしん
装丁:君嶋真里子
四六判並製小口折りカバー装グラシン巻
172頁
2025/04/06刊行