◆諷詠合同句集
ここには「諷詠」の心がある。万物を愛おしむ心が。東京の各所を吟行し、自然に触れ、人に触れ、一会の奇跡から生まれた十七音のさまざまな詩がある。
東京諷詠会の皆さまの中に脈々と流れる「諷詠」の美しい詩魂がこの「合同句集」となった。天界の先師先人へ届ける虹の橋が七井橋から空へと架かるのが見えた。
(序にかえてより・和田華凜)
◆作品紹介
落花には手を合せたき心持 井狩たかし
冬枯や色を失ひ一色に 石橋直子
塩羊羹愛でて信濃の春を愛づ 岩田雪枝
花束の紫よりの淑気かな 金田志津枝
丹沢の峰紫に初明り 河瀬正子
弁天池鏡となれる初景色 喜多真王
僧正の恋高らかにカルタ会 黒田泰子
うぐひすも来て日溜りの在り在りと 小菅唯介
落日に富士黒々と春寒し 齊藤正志
すいすいと直線好きなあめんぼう 佐藤恵美子
後もどり出来ぬ人生年新た 下谷和子
菖蒲湯を昼より焚きて子供の日 末永美代
悲しみをりんごの花に預け笑む 中松育子
鏑矢の音初春の武射神事 永嶋千恵子
新春の香を放ちたる神の瀧 長屋きみ子
風に色ありさうにけふ暖かし 西井千づ
氷もて童話神話の彫刻展 根本晴美
初空やひかうき雲の行くところ 花谷 文
紅梅の鹿児島紅の紅よかり 平井ひさ子
行く春の禅の心に浸りたる 前田たか子
古民家の縁の高さが涼しくて 溝口恭子
青空に早梅のはや烟りをり 三橋粂子
参詣を済ませ春待つ顔となる 宮川建子
桃の花飾りて祭美しき 村岡公子
東京の雪とは解けるために降る 吉田 隆
どことなく見知らぬ女初鏡 吉田るり
遠き日のかまくら遊び三姉妹 𠮷 永友子
[ふうえいはいくかい]
序:和田華凜
装丁:君嶋真里子
四六判並製カバー装
176頁
2025/03/03刊行