◆ 第一句集
「いつとてもゼリーは地震(なゐ)の中にあり」ゼリーと地震の遭遇。いつも逸早く地震を知るのはゼリーの揺れ、という処を少々捻って、地震の中にこそゼリー(揺れるものとしての存在)があると言ってのける。全く新しいゼリーと地震の関係を書いていて、再度私達は、ゼリーは揺れることに因って崩れない耐震構造になっていることを識る。
(中原道夫・序より)
姿なきもの乗せ出づる蟇
ものの芽の中にものの怪育つなり
ふと陰に入りしを夏の始めとす
まんばうの尾を惜しみをり夏の月
干されたる天草に道続きをり
ひとり逝きふたり消えたり西瓜切る
待ち人のあるやに萩の残花かな
いうれいを佇たせ終へたる柳散る
六道の燈とされよ石蕗の花
時の面のはつかにゆらぎ年立ちぬ
●著者略歴
本名・総子。通称・長谷川総子。1936年東京生まれ。1959年早稲田大学第一文学部卒業。1959~2005年主として外資系広告代理店の制作部門に勤務。専門はコピーライター。1998年「銀化」(中原道夫主宰)入会。2000年「銀化」投句開始。現在、「銀化」同人、俳人協会会員。楊名時、八段錦・太極拳師範