[立ち読みする]
格調高く、硬質、シャープな力感、そして、高い理想を掲げ持ちながらも、ユーモアや遊び心を失わない第2句集。
花冷えや聖杯騎士の槍長し
最後の晩餐に用いられた杯は聖なる杯である。また十字架上のキリストが流した血をヨセフが受けた杯とも言われている。その聖杯を護る騎士の姿は、キリストの沈痛の栄光を受けるにふさわしい甲冑姿。五、六人の勇者の長槍が守護の誉れを象徴している。ワーグナーの舞台神聖祝祭劇「パルジファル」にも似た効果音は、「花冷えや」にある。
(磯貝碧蹄館)
麦秋のガラスの靴でありにけり
薔薇廻廊光の槍に刺し抜かる
機関車の率ゐて行きし晩夏かな
秋虹の溶けゆく彼方サガン逝く
湯冷めしてコントラバスに抱かれをり
装丁・君嶋真理子 四六判並製ソフトカバー 144頁
●著者略歴
1946年6月12日東京都生まれ。1995年11月俳句結社「握手俳句会」入会。1997年7月「握手」同人。2003年4月第一句集『青きサーベル』(ふらんす堂)2004年10月平成16年度「握手賞」受賞。現在、俳人協会会員