◆第一句集
豆炒つて食べるも自由鬼の春
川森基次さんはまさしく「意志の人」と思われてならない。いま、私たちの俳誌「遊牧」の主要句会の幹事役を担っているが、その仕事ぶりの緻密さはともかく、作品に於いても首尾一貫して映像を重ねてゆく。掲句は掉尾の一句だが、「豆炒つて食べるも自由」はそのことを如実に表していると思われる。これからの展開を鶴首したい作家の一人ではある。
帯・塩野谷 仁
◆自選十二句
春の雨有精卵を祈りけり
命脈は波打ち際の桜貝
ヤポネシア密約の梅雨前線
溢るるや鮎とか愛とか身をよぢる
少年蟹忘れがたく泥の河
ふりかへる秋桜も無く鴎の死
秋は落日正気わづかに楕円
文楽めそめそと太夫炬燵欲し
無花果は隠喩さみしいマルコ伝
皮薄き男の矜持蜜柑剥く
何を聞かれても梟の銃眼
夢うつつ身は逆走の雪しまき
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ご本の紹介→ (ふらんす堂「編集日記」)
[かわもりもとつぐ(1954〜)「遊牧」「門」同人]
帯・塩野谷 仁
序・鳥居真里子
装丁:君嶋真理子
四六判上製カバー装
188頁
2023/10/12刊行