◆第一句集
花冷えの中有の傷のごとき月
ある種の才能のある人というのは、何処か過剰な処があるもの。この過剰さが、なりを潜めたとき、どういう立ち姿になるのかは今は一寸想像つかない。
帯より・中原道夫
◆中原道夫選十句
惜しむべし春とをとこの愚かさを
くれなゐをはつかに抱けり蒸鰈
中身より見かけ大切蟇
蛤の鍋にかそけきかひやぐら
牡丹雪無為な言葉のやうに降る
水温む死者は洗濯物出さず
花冷えの中有の傷のごとき月
撃てるかと鹿に問はれてをりにけり
今朝の冬手強くなりしバタナイフ
枯蔓を引けば崩るる大伽藍
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[かわはらまりこ(1958〜)「銀化」同人]
序・装丁:中原道夫
装画:黒井健
四六判上製カバー装
194頁
2023/09/30刊行