◆エッセイ集
私の住む街、愛知県蒲郡市は、人口約八万人、南は三河湾に面し、北は低い山に囲まれた温暖な住みよい街だ。昭和二十二年から発行されている蒲郡新聞がある。週二回水曜と土曜の発行だ。水曜に載る人生雑話という小さいコラムがあり、私は二〇〇三年五月から書き手のひとりとして参加している。
このたび、二百篇あまりのコラムから百扁を選び一冊の本にまとめることにした。紙面の制約があった元々の原稿に、少しく手を加えた。
◆作品紹介――「芍薬の季」より
私が死んだら、娘は何の花を飾りながら私を偲んでくれるだろうか。五月の末、私は芍薬の花を飾りながらそんなことを思っていた。
三年前、六月のはじめの梅雨の日に私の二番目の姉が亡くなった。姉の病態の思わしくない頃、私は芍薬の花を買い換え、飾り換えて姉を思った。姉は酒井和歌子と吉永小百合を足して二で割った、でも、ちょっと色黒なのが残念なきれいなひとだったから、芍薬の花は姉を思わせた。
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[イノサト(1948〜)「まひる野」会員]
装丁:和兔
四六判変形上製カバー装
212頁
2023/07/29刊行