◆第二句集
来し方に返り点欲し黒海鼠
子の逝くや捲る頁を冬にして
初時雨ボク治りますかの文字消えず
頓所友枝さんが『冬の金魚』に続く第二句集『秋へ書く手紙』を十年ぶりに上梓された。この間、交通事故に遭遇した息子さんは遷延性意識障がいとなり長い闘病生活を送った後黄泉へ旅立たれた。来し方にあの日あの時が無かったらと返り点を求めた万感の叫びである。逆縁の悲しみを胸に秘めながらも、人間の温かみが滲み出るよう句作に励んでおられる。
(「沖」主宰 能村研三)
◆自選十二句
百年の桜は雲になりたがり
知らぬ子の走るに泣けて運動会
母見舞ふ見知らぬ町の実紫
初時雨ボク治りますかの文字消えず
円陣を組んで噴水立ち上がる
ラムネ玉未だ出口の見つからず
ブルーブラックインク秋へ書く手紙
朝顔に水より生れし色のあり
ひとりとは私がルール蜷の道
水中花錘の枷を誰も持ち
透かし見る火酒の黒瓶夏の月
遺されし者の祈りや冬の星
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ご本の紹介→ (ふらんす堂「編集日記」)
[とんしょともえ(1949〜)「沖」蒼茫集同人]
帯:能村研三
装丁:君嶋真理子
四六判上製カバー装
210頁
2023/03/01刊行