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失われつつある日本の民俗行事や祭事への愛惜と、自然の讃歌を収めた第3句集。
早池峰は遥かなる山くわりんの実
句集名は、岩手県遠野の地名から採った。柳田国男が『遠野物語』で紹介した遠野は、ふるさとの原型のような土地である。人々は自然に親しみ、畏敬の念をもって自然に接してきた。私の俳句の原点も、そこにある。
(あとがき)
天地のはじめの嗚呼を初鴉
ほつかりとかまくらの灯の世界かな
一山のどこか滝音山ざくら
とうすみの糸のいのちの交むかな
たなごころ月にひらきて踊るかな
筒井筒ともに十八風の盆
くびるるをうかと忘れし瓢かな
蓮掘の棒立ちとなる夕映えて
嬰児籠(えんつこ)に猫のねむれる炉火明り
迷ひなきこの道をゆく石蕗の花
自選十句
※9句目蓮、ビブロス外字二点しんにょう
●著者略歴
昭和17年2月1日、東京日本橋生れ。慶應義塾大学俳句研究会に入り作句を始める。以来、清崎敏郎に師事。「若葉」主宰。俳人協会理事。日本文芸家協会会員。句集に『月明の樫』『麗月』(第14回俳人協会新人賞)