◆第一句集
鎌倉や歌声のする穴一つ
小山玄紀第一句集『ぼうぶら』の巻頭句である。紛れもなく、無季の作品である。これは、第一句集にふんだんに無季の句を入れることを決意した著者の決意にほかならないのではないだろうか。もともとは有季定型を旨としていた著者が、それまでの来し方をほぼ捨てて(あるいは否定して)、無季の領域に堂々と踏み出したことを意味する。
(序より・櫂未知子)
小山玄紀、この若くて優秀な才能が、今後どのような道筋をたどって大成してゆくのか、私にも全く想像がつかない。彼にとって、『ぼうぶら』は壮大な寄り道になるかもしれな
いし、このままさらに斬新な冒険に突き進むのかもしれない。いずれにせよ、私の中にはいささかの心配もない。彼の才能と俳句への真摯な姿勢は、必ず大きな果実につながると信じられるからだ。
(跋より・佐藤郁良)
◆作品紹介
鎌倉や歌声のする穴一つ
セーターを裂く音幽か扇ケ谷
蒲の花鳥から埃立ちにけり
西へ顔動かしてゆく桜かな
白桃を剝いてゐるなり海の上
抽斗になぜかをさまる吾亦紅
ローマいま猫の鎖の切断あり
弓の重心雪国の子等真剣に
受験生より電話来る渚かな
濁らねば蠅帳ならず母ならず
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ご本の紹介→ (ふらんす堂「編集日記」)
[こやまげんき(1997〜)「群青」]
序:櫂未知子
跋:佐藤郁良
装丁:君嶋真理子
菊判変形並製小口折りスリーブケース入り
200頁
2022/11/22刊行