◆第十八句集
さみしいといへぬさみしさ花石榴
これは第十八句集。ふっと、「金の輪」という言葉が浮かんだ。と同時に〈金
の輪をくゞる柩や星涼し〉の一句が出来た。
表現者は実体験に根差したものしか書けない。それがいかにデフォルメされていようとも。現実はシビアだが、夢はいくらでも繰り広げられる。(著者)
◆自選十五句
夢の字は艸や夏嵐
曇天を流るゝ時間ちやんちやんこ
その声はたしかに異界黄水仙
不死鳥の頁に付箋大夕焼
しらみゆくこの世の丈の火吹竹
正夢に赤のきはだつ寒さかな
青銅のキリストおはす雪の闇
金の輪をくゞる柩や星涼し
黒猫のすゞしくあゆむ奈落かな
ありふれた雨です爆心地の四葩
八月や息するうちを人といふ
さみしいといへぬさみしさ花石榴
夜は雲のながれやまざり遠蛙
その時は目をつむりませう玉子酒
胎内や渦まき昏るゝ飛花落花
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[はたゆみ(1938〜)同人誌「豈」所属 個人誌「GA」発行]
装丁:和兔
四六判上製カバー装
194頁
2022/01/15刊行