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平明にして、いよよ深まる抒情。平成11年より15年までの作品400句を収めた第5句集。
藁一本かけて巣作り始まれり
さし入れし手を押し上げて泉湧く
片脚は雲をつかみて蝉の殻
切り捨てにされて愕く蜥蜴の尾
新世紀海より明くる初日の出
陸尽きて海の始まる冬怒濤
富士箱根天城と見えて秋高し
炊き上がる色も香りも今年米
海見えてよりは迷はず恵方道
ひとまはり大きくなりぬ春の山
『春の山』という句集名は集中の
ひとまはり大きくなりぬ春の山
からとった。「山」はふるさと天城の山である。(あとがき)
装丁・君嶋真理子 四六判上製カバー装 224頁
●著者略歴
昭和9年7月9日、静岡県下田市生まれ。同47年、「蘭」に入会、野澤節子に師事。同49年、「蘭」同人。同56年、蘭同人賞受賞。同58年、「海」創刊主宰。現在、俳人協会評議員、日本文藝家協会会員、早稲田大学名誉教授、「海」主宰。