◆第一句集
河野 奎さんの最近作で注目したのは、
熊笹をしばく夕立や山刀
の句である。山小屋付近か、登山路で、激しい夕立にあったという情景であるが、覇気のある句である。熊笹を夕立の雨脚がつよく打つさまを「しばく」と詠みとめて、その突然の夕立によって、青々とした清冽な山気の立ちのぼるさままで彷彿させている。また、座五の「山刀」によって、全体の時空が定まり、生活感が滲み出た。夕立に濡れた山刀を手に持ち佇む作者の強い覇気までが伝わってくるのである。
(序・波戸岡旭)
◆波戸岡旭推薦十二句
明易の甚兵衛鮫の口の夢
初蝶のステンドグラスより出づる
湯豆腐に定規取り出す測量士
寝るだけの新人の寮秋風鈴
幼子の打水の向き定まらず
品書きのよぢれし屋台夜の秋
斎場の隅に白靴脱いであり
頑として聞かぬ幼子春嵐
香を削るこけしの里や余花の雨
白シャツの片寄るデッキ大鳴門
通院の坂に母負ふ草の花
膨らみの厚き封筒麦の秋
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ご本の紹介→ (ふらんす堂「編集日記」)
[かわのけい(1943〜)「天頂」会員]
装丁:君嶋真理子
四六判並製カバー装
176頁
2021/12/36刊行