◆第九句集
戦後遠しどくだみの線路跨ぐとき
北丹沢の鄙びた谷戸に長らく棲んで、見えないが天地間を充たすもの、その精気の働きに惹かれてきた。その谷戸を、くまなく歩き、ときに畑を耕して俳句にしてきた。
(あとがき)
◆自選十五句
天上のシリウス帰途の見えぬ旅
白いかもめ八月は歩いていった
揚羽きて水の話をしてゆけり
群れて立たず一撃ひびく朝の蟬
遠ざかる櫂の音いくつ天の川
きぶしの黄よ兜太先生の返歌
野の花のようになれたらまた一歩
春立てりあしたゴドーに会えますか
異星人まぎれていたり桜の夜
戦後遠しどくだみの線路跨ぐとき
小鳥くる大きな涙ひとつ連れ
みな土に還ってゆけり草は実に
九月一日風に立ってる小さな子
つくつくぼうしいのち惜しめということか
十二月木は立ったまま星に会う
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[さかいこうじ(1938〜)「朱夏」主宰]
装丁:和兔
四六判上製カバー装
230頁
2021/09/20刊行