◆第一句集
夜の秋舞台いきなり海の音
ほの暗い舞台に夜の秋の気配を感じたその時、いきなり海の音が流れて芝居が始まった。現実と虚構の境目が消えて日常の時間から引き離される。まだ誰もいない舞台に自分が立っているような錯覚に陥る。 私たちが生きていく中で、日常の時間から引き離される「その時」はいくらでもある。すぐに忘れてしまう「その時」を書き留めるところから俳句は始まる。
序より・小川軽舟
◆自選十句
未来とはまだ間に合ふ日男郎花
青春は幾度も来い木の実独楽
落葉焚若返ること夢に見ず
白菊のまはり明るく暮れにけり
猫のゐる空間バレンタインデー
われを待つわが家明るし天の川
流星や刹那の言葉信じ合ふ
水仙や父を励ますこと淋し
夜の秋舞台いきなり海の音
虫の秋枕を胸に日記書く
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[ひだかまりも(1954〜)「鷹」「椎の実」同人]
序:小川軽舟
跋・布施伊夜子
装丁:和兔
四六判上製フレキシブルバックスタイル
214頁
2021/07/15刊行