◆第五句集
俳句とは正体不明の恋人。
追えば追うほど、知れば知るほど、
尚さら見えなくなり、解らなくなる相手。
目に見えぬ物たちの、いのちと力。
いま、この星の、光りのなかに、生かされている私。
私を、どこかで、じっと見つめ、導き操るもの。
その存在を思うばかりである──。
(著者)
◆自選十三句
自選十三句
白足袋に心定まる日なりけり
香を眠り香に目覚めたる水仙花
どの部屋も灯して春の夜と思ふ
白牡丹柩のなかは繭のごとし
木とゐればわれも木となり涼しかり
自らの音をよろこび滝落つる
続き間の奥にちちはは夏火鉢
はつ冬の大きく使ふ羅紗鋏
天皇と語らひて兄しぐれけり
蒼天にやはらぐ冬の白い月
冬深む蔵に守られ蔵を守り
返り花日にも月にも励まされ
白といふあしたのいろを冬椿
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[ゆざわやえこ(1944〜)「橋」代表「草樹」会員]
序句・題簽・挿画:湯沢八重子
装丁:和兔
四六判上製カバー装
284頁
2021/07/27刊行