◆第一句集
初夢のおぼろげなるを吉とせん
初夢に吉夢を見ると一年いいことがあるとされている。何かめでたいものをと願っていたのだが、結局は「おぼろげなる」もの。悪い夢でなかっただけでも「吉」と思うところに、作者のオプティミストとしての人生観が出ているようだ。
(帯より・鷹羽狩行)
◆収録作品
路地の風さらつてゆきし風鈴屋
手花火の消えて指先までも闇
始めから満開なりし水中花
青葉木菟闇の襞より声洩らす
枯れすすむほどに色増す烏瓜
聖夜劇星のひとつが泣きだせり
娘のぬくみ残る春着をたたみけり
水引草小さな風をとらへけり
沈むまで水のつぶやき水中花
うつし世の塵を払ひて雛納め
*
ご本の紹介→ (ふらんす堂「編集日記」)
[なるとみよしの(1932〜)]
巻頭七句:鷹羽狩行
装丁:君嶋真理子
四六判上製クロス装
194頁
2021/06/28刊行