◆俳句と思索
加藤楸邨に師事し、ひたすら楸邨のみをみつめて句作をしつづけてきた俳人・上田睦子の句文集。俳誌「寒雷」と同人誌「島」に掲載したものを中心に収録。広やかな視座と手垢のつかない言葉によって俳句を思索する。
雪ふりつむ書なき書架にはひろびろと 睦子
手を垂れ、しかもひらいたままで対象を持たねばならぬ。何故なら手に触れ、胸に抱きとることによる所有は、おそらくその影が肌に落ちるほどの触れあいにしろ、必ずや滅びにいたるからである。(本文より)
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素朴にやわらかに見、歩き、生きたい。見ることが対象を己が寸法で切りとることでなく、逆に傷を負うことでありたい。その傷が私の中で成熟し、形をとって現れ、定着する。それが私の俳句であってほしいと願う。
五月の指がまつさをな港をわたる 睦子
(著者)
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[うえだむつこ(1930〜)]
装画:アンドロ上田グレン
装丁:和兔
四六判上製カバー装
274頁
2021/05/01刊行