右往左往のこの時に「言の葉のそよぎ」を集め見えてくる木はあるだろうか。しかし誰もが不安と迷いの中、生きることこそが仕事だと、なんとか日々を過ごしてきたのだからと前を向き、自粛の間も変わることなく青々としたその姿に、唯一息をつくことのできた場所『母の庭』をタイトルに決めた。
(あとがきより)
■作品紹介
五月闇心ふさぐ日湯をわかし玉ネギスープの渦を見てゐる
少女らの歌ふ聖歌のあやふさに雪の香りの水仙うつむく
靴紐をきゆつと結んで外に出る今日おきることこぼさぬやうに
地に還るはしきものたち朝に充つ空蝉かなぶん白さるすべり
墓浄め君が好物鮨見れば巻き戻される病室の日々
やはらかくどこかつながる人々はト音記号の丸みの中に
シルバーのフライ返しは幾千の卵をすくひ朝を励ます
Amazonでの本の購入はこちらより→ Amazon
ご本の紹介→ (ふらんす堂「編集日記」)
[わくいひろみ(195〜)」
題簽:二瓶里美
装画:石原葉子
装丁:和兔
四六判変形フランス装グラシン巻き
194頁
2021/01/13刊行