◆第一句集
夏茱萸や寡黙の父の掌
松子さんの俳句は、総じて一句一句の醸し出す情感が濃い印象がある。
情感が濃いと言っても感情的な表現は少ない。むしろ、物を提示することにストイックに徹しているのだが、選ばれた物の組み合わせから情感はおのずと流れ出すのだ。
(序より・小川軽舟)
◆小川軽舟抄出十句
歳晩や屋根裏部屋の本の嵩
校庭の子供消えたり蟬の穴
夜々の灯を川は映せり近松忌
一村の尽きて道あり梨の花
土手を下り土手を上りぬ春の暮
門灯を点けて家出づ雪もよひ
皿洗ふ床に黒猫パリー祭
狐鳴く山墅や榧の月若し
夫在りしこの世の風や花樗
行き暮れて片割月の花野かな
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(ふらんす堂「編集日記」)
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[せとまつこ(1941〜)「鷹」同人]
序:小川軽舟
装丁:和兎
四六判上製薄表紙カバー装
192頁
2019/10/7刊行