◆第三句集
井越芳子さんは耳の人。もののほんらい持つ内なる音につねに聴覚を澄ましつづける。目の欲望の過剰がその句にはみじんも無い。この寡欲から生まれる豊穣は潔いばかり。
(帯・高橋睦郎)
◆自選十五句より
火のいろを冬の海より持ち帰る
寒の雨夜が来てゐるとも知らず
戸口より真昼の見ゆる落花かな
平面とはおそろしき闇蛍とぶ
どくだみの波打ちてゐる白さかな
仁王目前姥百合のどつと咲く
日盛は花のくづるる音と思ふ
くさぐさの光おとろへきりぎりす
秋分のおほきな木蔭ありにけり
立像に手の位置のある素風かな
Amazonでの本の購入はこちらより→
Amazon
*
[いごしよしこ(1958〜)「青山」同人]
帯:高橋睦郎
装丁:間村俊一
四六判ハードカバー装
210頁
2019/09/25刊行