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小動物、キリスト教的世界、日常生活に滲む真剣さを詠み、鋭い芸術性を獲得した作品を収める。平成5年より13年までの作品の中から319句を厳選した句集。
◆ 『赤い魚』に次ぐ第三句集
『てのひら』の最大の特徴は作品が厳選されていることである。平成五年より十三年の八年間の作品を三百十九句に限っている。紀代さんの完璧性への意志と潔癖性の表れである。私は紀代さんの鋭い芸術性、詩性を愛する。
紀代俳句の面白さの一つは、蛇や亀などの小動物への心理の投影である。例えば、
<蛇出でてまつすぐにゆく気などなし>
<亀の子のもう引き戻すこと出来ぬ>
キリスト教的世界もまた紀代俳句の大きな特徴の一つである。
<パウロ祭水に口づけする小鳥>
<春一番壁のペテロが逆しまに>
そして第三は日常生活である。真剣さを滲み出しているのである。
<青邨忌裏の真赤のコート着て>
有馬朗人(帯文より)
第一句集『命綱』は山口青邨先生のもとで自由に力いっぱい勉強させて頂いた時代のもの。第二句集『赤い魚』は古舘曹人先生俳句道場「ビギン・ザ・テン」でみっちり勉強したものを中心にまとめた。そして第三句集『てのひら』に収めた句はすべて俳句を始めた時から教えを乞い、影響を受けた有馬朗人先生の選を通ったものである。著者(あとがきより)
何もかもほたるぶくろも咲いてゐて
菜殻火やいちにちのことこまぎれに
生きもののふりむく秋の澄みにけり
てのひらに青梅の冷もらひけり
帯文・有馬朗人 装丁・君嶋真理子
四六判上製カバー装 188頁
●著者略歴
本名、佐藤紀代。昭和18年6月29日岡山生れ。昭和37年共立女子大学英文学科卒業。昭和49年山口青邨入門。昭和56年夏草新人賞受賞。昭和57年「夏草」同人。昭和58年第一句集『命綱』。平成4年第二句集『赤い魚』。「天為」同人。俳人協会会員