◆第一句集
俳句という表現形態は、沈んだ気分を、うまく和らげながら詩的なことばにすくいあげてくれる。それは、俳句が人の織りなす事柄をアニミズム的自然の表象のなかへと包み込んでくれるからだろう。とくに季語の働きとしてそれを実感した。それにしても日本の自然は優しい。この優しさがなければ、私は俳句を作り続けることはできなかった。俳句はこの自然の優しさ(日本人がそのように認識してきたということだが)に支えられた詩形だとつくづく思う。
(著者)
◆自選十句
一声に悔恨込めし寒烏
頬被りて行く朝犬が見ている
たくましく瓦礫の猫に初時雨
三月や産土の地の底割れる
六月やサンチョ・パンサと立ち往生
邯鄲しずまり山姥降りてくる
蝸牛宇宙の際で思案せり
初紅葉生き急ぐ葉から染まりゆく
雪女郎子どもらと遊ぶ溶けるまで
朝寒し孤族の国で顔洗う
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(ふらんす堂「編集日記」)
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[おかべたかし(1949〜)]
装丁:和兎
四六判変形ソフトカバー装
216頁
2018/10/01刊行