◆ 第一句集
「妻といふ詩の友ありて秋灯」三十年に及ぶ邦乎さんの作品を拝見して、まず感じたことは「愛憐」と「浄土」という言葉だった。愛憐は昭和の、浄土は平成の邦乎作品を統べていると思った。どの句にも静江さんの存在があり、愛憐も浄土も全て静江夫人に収斂していると思った。
(序より・安立公彦)
金婚やうす紅の冬木の芽
月ながめともに生きむと言ひをりしに
遍路杖すすぎ立て置く枕もと
鶯や旅の朝餉はゆつくりと
深秋の雲語りゐる山上湖
ポスターを貼りかへ春を待つ駅舎
病窓の眩しさ日脚伸びにけり
声かけて春泥の路地すれ違ふ
いかのぼり二つならぶを遠く見て
卒寿近き灯をたてまつる涅槃像
「春燈」会員 (1915〜)
私家版
序文・安立公彦
装丁・君嶋真理子
四六判上製函入り総クロス装
168頁 2007.04.25刊行