◆第一歌集
点眼はかなしき習慣君が目に毎朝おとす碧のしづく
音楽は過去の素晴らしい作品を再現する芸術でもありますが、短歌には器の中で自分の世界を創り出すという別の強い喜びを見出したのかもしれません。
(あとがきより)
◆収録作品より
くるりんと束ねたる髪ほぐす朝うなじ涼しく木犀香る
金木犀咲きそむる日は透きとほり遠き過去より琴の音きこゆ
駆けしのちほてり残れる首すぢをかき抱く時馬は樹となる
指先のチョークにまじる淡き色今朝がた摘みしバジルのみどり
やはらかな響きでくるむ夏掛けをくんとはねのく新しき足
オペ日和あるとしたなら冬晴れの小鳥さへづる今日かもしれぬ
野を渡る風はりんごの匂ひして私の中の少女あらはる
山みればあなたを思ひ山みれば今日がその日でなきこと祈る
寝る前に青菜をゆがく湯気の中「大丈夫かい」となつかしき聲
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(ふらんす堂「編集日記」)
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[わくいひろみ(1956〜)]
題簽:二瓶里美
装画:石原葉子
装丁:和兎
四六判変型フランス装グラシン巻
190頁
2018/1/13刊行