◆遺句集
石楠花や雁坂古道雲に消え
雁坂古道は、甲斐と秩父の境、雁坂峠を越える秩父往還をいう。石楠花の咲く峠道が夏の雲にけぶる情景には、故郷への思いが託されているのではと思う。
句集『石楠花』には、遥かな時空を描いたたしかな作品が並ぶ。
(序より・井上康明)
◆収録作品より
源流の空の紺青橅萌ゆる
梵鐘の内の刻印花曇
石楠花や雁坂古道雲に消え
落し文比叡へはしる雲一朶
富士薊舂きて雲動きだす
講宿の床のささくれ晩夏かな
かりがねや月の出端の港坂
一燈は祈りの在り処夜鷹啼く
岳麓の星は大粒つづれさせ
藻塩焼く焰立ちけり鳥曇
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[みさわひでこ(1931〜)「郭公」所属]
序:井上康明
装画:三澤裕
装幀:君嶋真理子
四六判並製カバー装
188頁
2017/07/07刊行