◆第二句集
雪暗や牛舎に牛のほのぬくく
雪の夕暮れ、ほの暗い牛舎の牛たちが寒さに耐えながら春を待っている。その牛たちの生命力と忍耐強さを「ほのぬくく」と感知する鋭敏さと独自の把握に注目した。
本集は、娘さんの死や家族、故郷への思いを物の手触りと実感を大切に詠んでいる。そして、最大の特徴はこの牛の句が示すように、人間や小動物や鳥などの生きものの命を優しく素のままに詠んでいるところだ。
(「風の手紙」より・大木あまり)
◆自選十句
たんぽぽやたちまち越ゆる幼年期
この町に棲みて或る日は昼花火
折込のちらしの匂ひ巴里祭
夏木立庇を深く帽かぶる
秋風や橋に鯨の描かれて
須佐之男の末裔の子なりて秋渇き
榧の実の何処にも落ちて空き家かな
風花やアルプスといふ影法師
山窪の芯現るる寒の雨
父と子のまろげし雪に炭の目を
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[じょうくらよしの「ミントの会」会員]
跋:大木あまり
装丁:君嶋真理子
四六判フランス装グラシン巻
204頁
2017/07/28刊行