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◆ 第一句集
李博士から届いた最後の手紙は、平成十四年八月十三日付のものである。そこには、句集の訂正と、今も句作する至福の時間を楽しんでいる、という内容が書かれてあった。その四日後、博士は心臓病のために急逝された。私は、博士が院長を勤める安東市の病院から訃報を受けとって、暫く信じられず、茫然としていた。(略)博士は生前、句集がアメリカ在住の令息や令嬢、友人たち、そして多くの日本の俳人たちに読まれることを願っていた。この度の句集上梓がその願いに叶い、博士の御霊を少しでも鎮めることができるなら幸いである。(鈴木貞雄「付記」より)
紅の翳かすかに揺らぐ深雪かな
ゆく雲のかげりに映ゆる花菜かな
末黒野の紫紺の空に三日の月
雪の香にいよよ緑の松葉かな
春雪の止みて樹幹の色黒く
手当れば温もり伝ふ冬木かな
万緑や抱かれし嬰ややの夢に笑み
白鳩の背すぢに澄める秋気かな
声もなく紅葉に佇てる一日かな
秋灯新書披けば薫りけり
「若葉」誌友 (1926〜)
定価 本体2000円+税=2100円
序文・鈴木貞雄
装丁・君嶋真理子
A5判ペーパーバックスタイル
252頁 2007.04.15刊行