◆第五句集
ひとすぢの藁の突つ立つ夏帽子
敦さんの句が持つ透明感のある抒情性、年を重ねても失われない少年性はよく語られるところであるが、私がこの句集の中でより強く惹かれたのは、そこにあるものを見つめて実態を過不足なく描いた句たちだ。
(栞より・杉山久子)
◆収録作品より
巣箱より出づる音符のやうな鳥
恋文のごと花種の封を切る
それぞれの個室に戻る朧かな
金雀枝やマザーグースの原書本
本ひらくやうに牡丹の崩れけり
万緑や亀の子束子より雫
方眼紙にみづいろの罫小鳥来る
独り占めか一人ぼつちか大花野
月光を拒んでゐたる獣道
つぶあん派こしあん派ゐて月を待つ
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[かねこあつし(1959〜)「出航」所属]
栞:杉山久子
装丁:君嶋真理子
四六判並製カバー装
198頁
2017.05.05刊行