◆第一句集
鍋釜につらなるわれや雁帰る
石垣りんの「私の前にある鍋とお釜と燃える火と」の詩を想起するのは私だけでないだろう。無名の女性の一人として、しかし、同時に今を生きる人間の一人として世界を見つめ生き方を考えていこうとの意志が籠められている。
(序より・高野ムツオ)
◆自選十五句より
穴出でし蜥蜴に朝の広田湾
ヒコロとは白繭のこと山笑ふ
種物屋ありしあたりの水溜り
引鴨のいちばんあとを知子仏
苗市の真中に磯の荷をほどく
手向けある白詰草の髪飾り
燕来る津波の泥を嘴に
青饅の放つ酢の香や地震のあと
慟哭や津波跡地のランドセル
火のごとく椿が咲いて激震地
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[あべせいじょ(1939〜)「小熊座」同人]
序:高野ムツオ
装丁:君嶋真理子
四六判ハードカバー装
258頁
2017/3/7刊行