◆第一句集
杉箸の香りを割つて冷奴
「香りを割って」が眼目であり、香りが冷奴の味覚まで連想させて涼しげ。
夢や希望といった美しいものを求める態度が、著者の根幹にあることが伝わってくる楽しい一冊である。
(帯より・鷹羽狩行)
◆桑島啓司抄出
水温む鱏はマントをひるがへし
うれしさは口笛に出て青き踏む
クルーズのディナーのワイン星涼し
葉先よりこぼれ螢となりにけり
読み聞かす絵本を買うて原爆忌
杉箸の香りを割つて冷奴
美人湯にどつぷり浸り旅の秋
爽やかや吉野は杉の秀を正し
立冬や背筋のばせば影も伸び
花柄の散るほど打たれ干蒲団
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[うえなかてる(1932〜)「狩」同人]
序句・鑑賞ニ句・帯:鷹羽狩行
跋:桑島啓司
装丁:君嶋真理子
四六判ハードカバー装
210頁
2016/12/23刊行