◆第三句集
〈二つ折りの恋文が、花の番地を捜している。〉
蝶、というとルナールのこの一行を思う。
恋文とは言わずとも、
私の書いた一句が
どこかの番地に住む
だれかのもとに
届くことはあるだろうか。
(あとがきより)
◆自選十二句より
をとこありけり百本の梅植うと
繭干してうすきひかりの信濃かな
明易し古き映画に古き恋
星深く沈めてしづかなる泉
万緑とさびしき町と隣り合ふ
日のすでに秋日となりて膝の上
白露とふことばこころにころがしぬ
船帰りゆく秋の虹立つところ
あつけなく嫁ぎゆきしよ石蕗の花
木の実落つ伯林に壁ありし頃
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[たかうらめいこ(1960〜)「藍生」会員]
栞:高田正子
装丁:君嶋真理子
四六判仮フランス装カバー装
2016/10/25刊行
214頁