◆第一句集
涼しさや三河の国の物語り
例にもれず親不孝を通しました。
父は海軍での兵役があり二度も召集され終戦は呉で迎えました。
幼い五人の子供がいた親心を思う時胸が詰まります。
拙いこの小冊が、最後まで理解し合えなかった父への詫状の一部に代われば幸いです。
(あとがきより)
◆収録内容より
矢作岸柳飛び立つ小紫
木枯や木節掘る人砕く人
下る鮎流れに添つて簗の上
お辞儀する真竹の籔に小米雪
上京す花の命の散らぬ間に
迷ひたる同士や初夏の武蔵野に
秋深し曳かれて渡る雨の橋
菊活けて娘と昼を食る文化の日
父の日や礼状一通出し忘れ
青田道ビュースポットに誰も来ず
*
[よしだとしこ(1932〜)]
装丁:君嶋真理子
四六判変型小口折カバー装
2016/11/07刊行
100頁