◆第五句集
白つめくさ野に入り魂拾う人
鈴木明は老年の感懐と過去への追憶とにとどまってはいない。年ごとに回帰する自然の生命力に改めて讃嘆を送り、現在の若い世代にかつて自分たちを襲った同じ苦難が襲うかもしれないことを真剣に憂えている。それこそが鈴木明の「六十年後の春」、いや、七十年後の春なのだろう。
(跋より・高橋睦郎)
◆収録作品より
赤い靴下履いたまま寝る冬の金魚
俺おれおれと広がる俺や穴惑い
雀が消えた佐保姫がたべたのよ
光は春へ縄文十一人骨出土
少年に鏡の形見雁渡し
蜥蜴は刹那跳弾となり穴を出る
振り返るイグアナと僕薔薇同盟
大人が読む子どもの絵本明易し
しぐれて二人月面にいるようじゃないか
猫町のあかの他人と妻夕映え
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[すずきあきら(1935〜)「野の会」主宰]
跋:高橋睦郎
栞:筑紫磐井・高山れおな・的野雄
装丁:和兎
四六判ドイツ装函入
230頁
2016/09/28刊行