◆第一句集
保江さんの句は元気だ。「汗ばめる乳房二つ富士一つ」のように。近景の乳房、そして遠景の富士山の対比がとても元気。保江さんの句はまたとても明るい。「青葉風フィラデルフィアから葉書」のように。こんな葉書が来たら明るくて胸が広くなるだろう。もちろん、保江さんはひそかに繊細だ。「朝礼のわたしを登るてんとむし」の天道虫のように。わたしを登った天道虫は羽を広げて飛び立つ。保江さんもこの句集で言葉の翼を拡げて飛び立つ。青の先へと飛び立つ。
(帯より・坪内稔典)
◆自選十句より
春満月シフォンケーキの背が伸びる
種袋シャカシャカ鳴るやつ鳴らぬやつ
薔薇の雨ドーベルマンが目を覚ます
旅プランイルカ来ている夏座敷
コスモスや直線曲線絡む恋
月光浴して犀の角つやつやと
星月夜星がこぼれてまりもまりも
木版のわずかにずれて小鳥来る
小春日を伸ばして巻けば卵焼き
まごころを胸にホッカイロは背中に
Amazonでの本の購入はこちらより→ Amazon
*
[なかいやすえ(1955〜)「船団の会」会員]
帯:坪内稔典
栞:神野紗希
装丁:和兎
四六判変型半上製カバー装
162頁
2016/09/22刊行